第七世界
朝食。

食卓には光蔵と萌黄の他に光蔵の秋服の上に割烹着を着用した母親と胴着をきた祖父がいる。

父親の影はない。

「兄様は、やはりお強いですね」

萌黄は醤油をかけた鮭を食べる。

「生きるためだ」

光蔵は卵かけご飯を無表情でかきこむ。

「光蔵、稽古に精が出るのね」

「藍子、おかわり」

祖父が殻になった茶碗を差し出した。

「父さん、あまり食べると毒ですよ」

「強さとは何か、それは食事から始まるのだぞ」

そういいながら、豪快にまた食べる。

「私も、兄様のように強くなりたいですの」

「強くなってどうする?」

「皆を守ります」

間髪いれずに答える。

一瞬、箸が止まるが再び動かし始める。

「剣の強さだけではどうにもならん事もある」

「でも、その強さがないと守れない者が出てくる事も、また事実ですわ」

「そうだな」

それだけを告げると、食事は終わっていた。

「光蔵、夜間に家を出て、体を壊してはなりませんよ」

「分かっている」

光蔵が席を立ち、自室へと向かった。
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