第七世界
次第に生徒が入ってくる。

談話する生徒もいれば、机に伏せる生徒もいる。

「ちょっと乾」

扉から駆け足気味で入ってきた茶髪の女らしき人物が光蔵の机を叩く。

「何だ、柳生」

「柳生じゃなくて、キャ・サ・リ・ン。それより、これ見てよ」

ファッション誌を掲げて指差す。

「この服さ、今すっごい人気なの」

「それがどうした?」

「乾なら私の気持ちわかるわよね」

キャサリンが目を輝かせながら、何度も強調するかのごとく指差す。

「わからん」

無愛想な光蔵とて、人の意図を理解する事は出来る。

理解しているからこそ、YESとは頷かない。

「乾がー、今日はー、必要な物買いに行くんでしょー?」

キャサリンは光蔵の言葉を無視して続けた。

「それと何の関係がある?」

「あるってば、ついでっていう便利な言葉があるじゃない」

光蔵は頭を抱えたくなるが抑えた。

「キャサリン、俺はお前にいつも何と言っている?」

「出来るだけ自分で解決できる事はしろ、でしょ?」

「それは自分で解決できる事だろう」

「ノンノン、人気があるっていったでしょ」

「もう一度言う、自分で出来る事はしろ」

普通の人間なら逃げてしまう睨みも、キャサリンには通用しない。

しかし、光蔵に頼んでも無駄だと悟ったキャサリンは退散した。
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