第七世界
「くく、その時は二次災害とやらを僕がぶっ潰すだけの話さ」

棒を肩に乗せて去っていく。

「ほーんと、きもいわ、あいつ」

光蔵の近くにいたのは、もう一人の四天王であり恐ろしい腕力を持つ女の相良美祢であった。

「相良、先ほどの話を聞いてたな」

「聞いてた。仮面がどうとかってあれでしょ。私からしたらー、壊すとか正直どうでもいい、それ以前に、そんなばっちぃもん触るわけないじゃん」

相良は最初からやる気がない。

「そんな事より、ね、乾」

「何だ?」

「今日さー、男とデートなのよ、ちょっとお金ない?」

「ない」

「えー、困るんだけど」

「お前の問題だ、どうにかしろ」

「ちょっとでいいから!」

手を合わせながら懇願するも、光蔵は背中を向けた。

「くどいぞ、相良」

美祢のたかりを光蔵はかわして、廊下を歩く。

「けちくさい男は嫌われっぞ!」

後方で叫ぶ美祢の言葉を光蔵は聞かないふりをする。

秋になっても日差しが強く、廊下へと差し込んでくる光は暑い。

光蔵は三年の教室がある三階から二階へと降りて二年の教室に向かっていた。

二年にとって、三年の光蔵は四天王で恐ろしい存在であると認識されている。

本人にとって、そんな評価は不当と感じていた。

学園にいる者として正しい事をしているだけであるからだ。

ただ、他の人間よりも生き方が全く違っており、死線をいくつも潜って来た。

その本人から出る威圧は一般人にしてみれば、きつい。

ただし、二年の一部の者を除いてはの話だ。
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