第七世界
一階、二階、三階。

どこを見てもキャサリンの姿はなかった。

光蔵は走っているのに息を切らさない呼吸法をとっている。

河岸を変えるために一階へ降りようとした時、背後に人とは別の気配を感じた。

感じると同時に背後からの攻撃が行われる。

振り向かずに肩にかけてある鞘付の刀で防ぐ。

そして、回し蹴りを当て、背後の輩との距離を開けた。

「鬼か」

しかし、鬼よりも身体能力が劣っていると見た光蔵は、普通の鬼ではないという事を理解した。

「ああ、誰でもいいから心臓ぶちぬいて、血を吸い尽くしたい」

言語は話せる。

妖刀を持った時と症状は違い、意識がないわけではない。

相手が人間に戻る事が出来るかは分かっていない。

妖刀であれば、手放した時点で人間の意識を取り戻し力も戻る。

仮面の場合、相手は仮面をしていない時点で、仮面をした後の状態でも効果が継続している事を意味する。

吸血鬼と違う点でいえば、本能を抑えきれていない状態であるという事。

力は吸血鬼よりも及ばないが、吸血鬼に近い性能を引き出すという事。

光蔵はただちにその事を理解した。

仮面を被った事が故意ではないとはいえ人間を止めてしまった以上は、処理するしかない。

先ほどの台詞を聞いた時点で、他者の命を脅かす存在として認識してしまった。

光蔵にも情はある。

捕縛して時間をかけて治療する事も出来ない事はないだろう。

しかし、道具はあったとしても、人が多い場所で使う事は困難を極める。

光蔵は五体満足で生かす方法はないと判断した。
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