第七世界
周囲には人がいる。

何事かと思い光蔵と鬼人を見ていた。

被害が出ると見た光蔵は近くに違いが最小限になりそうな場所を探る。

その間にも鬼人は光蔵に飛び掛る。

今の状況で鞘を抜く事は許されず、鞘刀で相手の拳を防ぐ。

風圧で背後の壁に亀裂が入り、その周囲にいた人間は軽い切り傷を負った。

悲鳴が起こり、逃げ惑う人々。

光蔵から滲み出る威圧が瞬時に膨れ上がる。

「見境がない以上、無傷でいられると思うな」

数メートル先に駐車場へと出る入り口を見つける。

受け止めたまま、足腰の力を最大にして飛ぶように駐車場へと押し込んだ。

間合いが近すぎるため、膝蹴りを入れる。

腹部に当たって後方へ飛ぶが、見事な着地を見せた。

「おいおい、俺とやろうってんかい?」

光蔵は鞘から刀を抜いた。

「怖い怖い。でもよ、俺も空手やってるんだぜ」

仮面の行き着く先は強い者であるということ。

鬼人は地を蹴り、あっという間に距離をつめた。

人間では出す事の出来ない正拳を突き出す。

刀の側面で受け止めつつ、一文字に薙いだ。

その薙ぎをギリギリで体を後方へ反らして回避するが、それが隙となった。

光蔵は人間ではあるが、人間以上の動きを見せる。

脚力、腕力、背筋力、どれを取っても吸血鬼と同等である。

ひとえに異常なまでの鍛錬が生み出した常人ならざる人間の技。

鬼人が距離を離す前に懐から銀の杭を取り出し、鬼人の足に打ち込む。
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