第七世界
イチゴクリームのクレープ、三つで1800円。

代金は全て俺持ちみたいだ。

お金を払ったんだから一つは俺の元にくるのかと思いきや、苛立ちを食にぶつけて、三つを平らげてしまった。

「一応聞くが、俺の金だぞ?」

「うう、気持ち悪い」

刹那は食べた直後にグロッキー状態に陥っている。

「お前、馬鹿か?三つも食えば、胸焼け起こすのも当然だろ」

「水う」

「お嬢ちゃん、大丈夫か?」

店の中からグローバルと書かれたエプロンの下にアロハシャツと短パンを着用してるおっさんが紙コップに水を入れて出てくる。

「すまない」

「いいっていいって、二人のイチャイチャしてるところも見せてもらったからな」

何を想像しているのかは知らないが、おっさんが嫌な笑みを浮かべてるので少し気分が悪くなる。

「一つ言うが、俺達はカップルじゃないぞ」

「手を繋いで歩いてるからてっきりカップルかと思ったんだがな。おじさんの勘違いか」

「そう、勘違いだ」

「まあ、あまり喧嘩はするなよ」

おっさんは暇な店内へと戻っていった。

隣を見ると、グロッキー状態に加えて沈んだ刹那がいる。

「水を飲んで、もっと気分が悪くなったのか?」

「ちゃう」

「ゲロ吐くならトイレにいけよ」

「そんなんウチの勝手や!」

いきなり怒鳴ると、椅子から飛び降りて遠ざかろうとする。

元から気分が悪いのに、急に走ったので更に気分が悪くなったらしい。

その場に蹲ってしまった。

「無理するなよ」

「うるさいうるさいうるさい!」

怒鳴り声を出してる刹那のほうが近所迷惑になっているんだがな。

「あの、大丈夫?」

座り込んだ刹那を気遣う女性の声が聞こえてくる。
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