第七世界
「あんた、名前なんや?」

睨みつけるような目つきで、佳那美の事を見ている。

何故、お前は敵視する。

「刹那、もうちょっと聞き方ってもんがあるだろう」

「幼児みたいな呼び方した罰や」

気に入らない事があればぶっきら棒になるのはよした方がいいと思うがな。

「気にしないでいいよ。私、亜双佳那美っていうんだ」

それでも冷静に対処するところ、佳那美のほうが一枚上手なのかもしれない。

「刹那は、鷹威君の友達かな?」

「従妹や!何か文句あるんか!」

「ないない。そっか、鷹威君と親しいのは従妹だからなんだね」

「お前の脳の仕組みはどうなってるんだ?」

突っかかれて、キレられて、帰ろうとしてたのが仲がいいだって?

佳那美の感性がおかしいのか?

「えー、だって、言い合いするなんて、仲がいい証拠でしょ?仲が悪かったら、声もかけないと思うよ」

「いやいや、険悪な仲の怒鳴りあいっていうのもある」

「鷹威君は刹那と仲良くしたくないの!?」

「そりゃ、出来れば仲良くしたいけどよ」

「それじゃあ」

佳那美が刹那の手を取る。

「な、何するんや!」

刹那は暴れるものの、無理矢理引っ張って俺の傍にもってきた。

そして、今度は俺の手を掴んで、刹那の手と重ね合わせる。

「ホラ、手と手を合わせて、幸せってね」

「仏壇のCMをパクってるんじゃねえよ」

「でも、そういうことでしょ?ほら、他人との触れあいにも幸せが隠れてる。いい?離しちゃ駄目だからね」

佳那美は自分のやったことに満足を覚えると、遠ざかっていく。

「アイス溶けちゃうから帰るよ。鷹威君、ちゃんとリードするんだよ!刹那、また今度遊ぼうね!」

軽く手を振ると、商店街の奥へと嵐のように去っていってしまった。
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