第七世界
「変な女や」

「お前もな」

「あんたよりマシや!」

手を引き寄せて、ボディーブロー。

「お前なあ、仲良くしろっていってただろ」

片腕で腹を押さえながら抗議するものの、聞く耳をもたない。

「恭耶、全然あかんわ」

刹那が手を離そうとしたが、俺は力を込めて逃がさない。

「あんたとおったら腹立つねん。離してや」

「一方的な約束ではあるが、手を離す気はないぜ」

「ええわ。引っ張っていくまでや」

一歩一歩進むが、俺は腕以外に力を入れていない。

だから、あまり前へは進んでいない。

「あんたもちょっとは歩きや!」

「引っ張っていってくれるんじゃないのかよ?」

「あんた、おちょくってるんか?」

最初から本気で怒っているのだが、どんどん酷くなっていく。

「そう、カリカリするな」

「ふん!」

俺が歩き出すと、仕返しなのか立ち止まったままだった。

「ふう」

体重の軽い刹那なら、簡単に運ぶ事が出来る。

「歩かないと恥ずかしいことするぞ」

「出来るもんならやってみいや!」

俺自身も恥ずかしいのだが、やると言った以上は一緒に恥をかいてもらおう。

刹那の膝裏に腕をもってくると、そのまま持ち上げる。

「な!」

「な?恥ずかしいだろ」

一気に周りの視線が俺達に集まってしまったようだ。

刹那は瞬間に顔を赤らめてしまう。

大声を出しているときは冷静さを欠いて目線は気にならないようだが、今は嫌って言うほど気になっているらしい。
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