第七世界
「み、皆見てるやんか!はよ下ろしてやあ!」

リンゴのように真っ赤な顔を見てると、楽しい気分になる。

「お前がいいって言ったんだろ?このまま商店街を歩いて有名人になろうぜ」

「何、ふざけたこと言ってるん!ええから、降ろせ!」

周りの人間がくすくすと笑い始めている。

「ははは」

俺自身も笑ってごまかす。

そして、刹那が恥ずかしさのあまり泣き始めた。

「ボク、いじめて何が楽しいんよ」

「自分の言う事に責任を持てとわからしてるんじゃないか」

「こんなん全然楽しない。もう大阪帰りたい」

「はあ」

そっと地面に降ろす。

「これでいいだろ。後は好きなようにすればいい」

俺は立ち止まったまま、刹那がどこに行くのか気になった。

だが、刹那はその場で更に顔をぐしゃぐしゃにしてしまう。

「うえ、えええん!」

大きな声で泣き始めて、俺に対して周りから悪口が聞こえてくる。

「彼女をいじめてるんじゃない?」

「うわ、最低ー」

このまま行けば、どこぞの紳士に殴られかねない。

我が侭に付き合うのも疲れるな。

「刹那」

「いややー!大阪帰る!」

俺が掴もうとすると、無意識に腕を振るって阻止する。

泣き止めと言った所で、無駄な行為だろう。

「よし」

掴もうとするのは止めて、低空タックルを決める。

「ぐえ!」

刹那が妙な声を上げると、ぐったりとしてしまう。

「プレゼントが欲しすぎて我慢できずに泣いてたんだよなあ。お前の気持ちはよくわかった。じゃあ、早く行かないといけないな」

独り言でごまかして、動かなくなった刹那を肩に担いで商店街を歩いていく。

否が応でも有名人にはなってしまったようだ。
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