第七世界
刹那を担ぎながら歩く事数分。

寂れた店を通りかかろうとしたところで、刹那が目を覚ます。

「うわ!何でこんなに高いん!?」

驚くのと同時に体を硬直させた。

「それはね、お前が担がれているからだよ」

「変態!誘拐犯!」

「物騒な事を言うな。お前が欲しそうな物がある店まで運んでやったんじゃないか」

寂れた店のガラスケースの中には皿や人形などのアンティークが置かれていた。

「あ、可愛い」

刹那がガラスケースを見ると、本当に骨董品に関心を抱いたようだ。

「恭耶、降ろして」

今すぐにでも近くに行って見たいようだ。

「怒鳴らないなら降ろしてやる」

「約束する。やから、降ろして」

随分、素直になったな。

何とかは秋の空とはよく言ったものだ。

素直な刹那を信じると、地面に降ろした。

だが、いきなり俺の脛をトウキックで蹴る。

「お、お前、騙したな」

「怒鳴ってないやん」

確かに、刹那の言う通りなのだが脛は反則だ。

今さっきの事を根に持っているのか。

俺は脛をさすって、痛みを和らげる。

「本当に骨董品に、興味あんのかよ?」

刹那がガラスケースに張り付くように見ている。

「ボク、この店の中の物、もっと見たい」

骨董品にしてもピンからキリまである。

刹那の事だから、欲しいものなら高くても安くても買わせようとするだろう。

俺が止めようとする前に刹那は店の中に一人で入ってしまった。
< 51 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop