第七世界
「夫はすでこの世におらん。じゃから、この人形はここに回ってきた」

「一緒に埋葬しろよ」

「夫が言うには、人形を他の誰かに渡して、不幸な人を救ってくれとの事じゃ」

何か怖いな。

祝福だとは言うが、要は人の念が篭っているってことだろ?

それは、呪いに等しいものではないのか?

「よし、刹那、別の物にしよう」

「ウチも幸せになりたい!」

「はあ?」

この馬鹿は何を言ってるんだ?

「恭耶!この人形が欲しい!」

「おいおい、妙な話があるなんて、本当は不吉な代物なんだぞ」

「嫌や!これを買ってくれな、ボク、暴れるんやからな」

何て迷惑な奴。

本当に高校生なのかと思うぞ。

「少女の願い、聞き入れてはくれぬか?」

「じいさんが持ってろよ。幸せになれるんだろ?」

「ワシはもう幸せになっている」

商売にしているところから怪しすぎるな。

「刹那も十分、幸せだろ?」

「誰かのせいで、最悪な日が続いてるわ」

結構、お前も原因だと思うんだがな。

ちょっとした事で、怒らなければいやな目にあわなくても済むのにな。

だが、買わないと余計な駄々を捏ねられるのがオチだろうな。

正直、呪いにビビっていては話にならない。

深くこだわる必要もないか。

「解ったよ」

「もう、恭耶も素直な奴やないな。最初からええって言っときや」

刹那の言動には呆れ返るばかりだ。

「ま、お前にはお似合いだな」

「それくらい可愛いってことやろ?」

「いや、幼稚臭いってこと」

発頸を腹に打たれて、店の外まで吹っ飛んでいく。
< 56 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop