第七世界
「楓、動けるか?」

「難しいな」

気持ち的に弱っているわけではなく、動かないものは動かないのだ。

「しょうがねえな」

俺は楓の脇の下に体を入れて、持ち上げる。

「ほう、君はまだ動けるのか」

「俺は人一倍タフなんだよ。問題ねえ」

実は腹の痛みは引いていない。

根性で何とかしているだけだ。

「刹那、帰るぞ」

「ほんま、無茶ばっかりするんやな」

刹那が逆側から楓の事を支える。

「男はな、無茶しなくちゃならない時もあるんだよ」

いつまでも同じ事の繰り返しなど、俺はゴメンだ。

多少の無茶があってこそ強くなれる。

俺はそう信じている。

「君は、何も聞かないんだな」

家に歩いている途中で、楓が気になることを言い始めた。

「どうせろくでもない知り合いなんだろ?」

「自分の事に繋がるかもしれないという考えはないのか?」

「いきなり女をぶん殴るような奴の事なんか知りたくねえ」

「だが、刹那の事に興味を抱いていたぞ」

刹那はどんな反応をするのか、こちらを見ているようだ。

「あいつが刹那の事をどう思っていようがな、あんな強引なやり方を通す野郎に刹那は渡さねえよ」

「恭耶」

「ま、あいつは本当の刹那の姿を知らないからな。そりゃ可哀想って奴だぜ」

「あんたもそんなに知らんやんけ!」

また余計な事を言ってしまったようで、刹那にケツを何発も蹴られる。
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