第七世界
「楓、動くのは辛えだろ。今日はそこで寝ていいぜ」

家は隣だが、今の状態で帰らすのは気が引ける。

「ほう、君にしては気が利くじゃないか」

「へ、たまにはいい事いうだろ?」

「何気取ってるんよ。恩売って、何考えてるつもりなん?」

「お前な、俺は余計な事を言うけど裏表はねえように生きてるんだよ。そもそも、そんな生き方好きじゃねえ」

「確かに、君ほど解りやすい人間はいないからな」

楓の野郎、俺の事を全てわかったと思ったら大間違いだぞ。

「君はもう少し優しさを覚えたほうがいいな」

楓は横になって、寝る準備をする。

「今日、病院に行かんでもいいんか?ひどいんやろ?」

「死ぬほどの傷じゃないし、手遅れにはならない」

目を瞑って、しばらくすると寝息が聞こえてくる。

「寝ちしまったか」

「そやな」

「全く、とんでもねえ一日だったな」

俺も明日病院に行ったほうがいいかもしれないな。

「ふん、悪かったな」

「誰もお前の事を悪いだとか言ってねえだろ。何で、そう突っかかってくるんだよ?」

「あんたが紛らわしい事言うからやろ!」

一日の終わりも怒鳴られるとは。

こいつの癇癪をどうにかして欲しいところだな。

「少し静かにしてくれないか?」

刹那の怒鳴り声で楓は起きてしまった。

「ご、ごめん」

「俺達は向こうに行くから、今度はゆっくり寝てくれ」

「頼んだ」

もう一度目を瞑ると、すぐに夢の中へと入っていった。
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