第七世界
「さて」

気を失った名もなき生徒の襟首を掴み、着席させる。

座っていれば、問題ない。

「酷い奴やな」

刹那が名もなき生徒の顔を見ながら同情の顔を浮かべる。

「いや、お前のやる事の8割減だ」

「ボクは恭耶みたいに残酷やあらへん」

「おいおい、自分の事をミトコンドリア程度にしか解ってないだろう?」

「ふん、恭耶よりはわかっとるわ」

刹那が不機嫌になって、席へと戻っていった。

時計を見ると、朝の授業が始まりそうな時間になっていた。

刹那は俺にぐだぐだ言うのだが、時間はきっちり守る真面目な奴なんだよな。

しかし、机に座っていても高校生に見えないな。

「今、余所見をしている人間は校庭の草むしりだ」

「何だと!?」

黒板を見ると、すでに楓の姿がある。

「単位がなくなるのと、家に帰って夢を見るの、どっちがいい?」

「草むしりつったら行事みたいなもんだろ!皆ですればいいじゃねえかよ!」

「君は他人の顔を見つめる程の暇人だ。その時間を草むしりに費やしても罰は当たらない」

俺が何かを言う前に欠席を取り始めた。

楓だけならまだしも、俺が愚痴を言い過ぎてクラスメイトまで敵に回すのはよくない。

「じゃ、恭耶は居残りな」

「だから、彼氏が出来ないんだよ」

「君は何か言ったか?」

「いや、楓は今日も美人だよ」

「そうか。花壇の水遣りも追加しておく」

刹那の嘘つき。

褒めたのに、余計な仕打ちが増える一方じゃないか。
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