第七世界
「くう、腰がいてえ」

汚れた手を校舎一階の水道で流して、手の甲で腰を打つ。

長時間、座った姿勢は体に良くない。

「体中に乳酸が溜まっているような感じだぜ」

ハンカチを持っておらず、濡れた手を制服で拭いた。

「鞄は教室か」

夜の学校ほど不気味なものはない。

俺の教室は二階なのだが、近くても怖さは変わらない。

朝とは違うひっそりとした雰囲気がある校舎内。

「うむ」

嫌な空気に悪寒が走ってしまう。

さっさと終わらせるために階段を上り、踊り場に出たところだった。

その更に上の二階付近で人影を発見する。

すぐに上の階に上がっていってしまってよく見えなかった。

「ん?」

学校の制服を着ている女の子だったような気がする。

今日は疲れてるから教室に行って帰ればいい。

ホラー映画でもよくあるじゃないか。

行ったら絶対に死ぬような目に遭う。

でも、行かなきゃ何も始まらない。

「今日は疲れてるしなあ」

しかし、自分の性格はよく解っている方だ。

俺は『行く』を選択する。

興味本位、好奇心旺盛、そんな言葉が俺にはお似合いだ。

日常からの脱却を望んでいるわけではないが、少しは妙な事も体験してみたいのだ。

「この間、痛い思いしたのにな」

本当にアホだな。

女の子の後を追い、二階を通り過ぎて三階へと進んだ。
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