第七世界
「鷹威君、優しいね」

「もったいぶらずに言えよ」

「そう、じゃあね」

佳那美は告白するかのように嫌な間を置く。

「殺していい?」

あまり耳に入れたくない事が、勝手に頭の中に刷り込まれた感じがする。

「は?何?」

日本の国は、人殺しが認可されたのか?

いや、ちょっと待てよ。

確かに、この学園はおかしいところが多いからな。

「やだな。言葉で伝えるのも面倒くさいんだから、ちゃんと聞いててよ」

「アホか。二度も言わんでいい、俺を殺したい真意を言え」

「満月の日にはさ、本能が殺戮衝動を促すんだ。誰かを殺してしまえってさ」

「お前は精神科に通ってたんだな。それでも、治らなかったんだよな?」

ヤンデレそのものじゃないか。

病院も簡単に退院させるんじゃねえよ。

「ううん、いつもは普通なんだ。人を殺したいとも思わない。でも、今日は殺したくるなるんだ。だから、理性のある内に誰とも合わないように屋上に居たのに、鷹威君が来ちゃったからさ。ねえ、御託はいいから、殺させて?」

「お前は女だろ?見たところ武器も持ってねえのに、俺を殺せるのかよ?」

「武器?これ?」

片腕が大きく膨れ上がり筋肉に満たされ、相手を簡単に切り裂けそうな鋭い爪が精製される。

片腕だけ不恰好だが、呑気にしている場合ではない。

海江田の時以上に、危険な状況だ。

誰の助けもない、尚且つ一撃で死ぬ。

いきなり来なかったが、ホラーの定番じゃねえか。

「俺が殺されたら、いい事あんのか?」

「そうだな、今日は人を殺さないと思うよ」

異世界にきた感じがするのだが、驚きはあまりない。

「何が本能だ、何が衝動だ、自分を抑えられねえ野郎に俺は負けねえぜ」

だが、状況が格段に不利なのは言うまでもない。
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