第七世界
幽霊には出会ったことがなかったので、今までは怖いと感じなかった。

後ろから追い詰めてきているのは幽霊ではないが、同じような類だ。

恐怖という感情があるのなら、今からも知れない。

多少、口が悪いから、神さんが用意した大きな壁なのかもしれねえ。

家には暴力の権化が存在するものの、可愛いんだ。

一人にさせるわけにはいかねえからこそ負けられねえ。

「君が外に逃げれば他の人が殺されるんだよ?自己犠牲を大切にしようと思わない?」

「思ってたまるかってんだ!どうにかしてお前を止めるぞ!」

「鷹威君ねえ、逃げてちゃ説得力ない」

「うるせえ!」

俺だって必死に解決方法を探しているんだ。

ごちゃごちゃ言われると、考えがまとまらねえだろうがよ。

走りながら、一つの手段に辿り着く。

「そうか」

理科室には、何かと恐ろしい化学兵器が置いてあるはずだ。

黄燐とかあったら効果的なんだが、毒物だからな。

学校には置いてないかもしれない。

「行く価値はあるかもしれないな」

「どこに?」

「え?」

今まで、遊びだったのか。

佳那美は俺の横に位置しており、狂気に満ちた笑顔を見せている。

「退屈でつまらないからさ、もう殺しちゃうことにしたよ」

「おらああ!」

佳那美が攻撃する前にストレートを佳那美目掛けて放つ。

だが、対応が遅れていても、素早く豪腕によって防がれる。

「へえ、人間にしてはいい拳を持ってるね」

防御した豪腕の後ろから睨む目つきは常人のモノではない。

やられる?

次いで蹴りを放つが、足首を掴まれる。

「あはは、捕まえた」

「嘘だろ?」

刹那、玩具を遊ぶように、足首を軸に振り回される。
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