第七世界
仮面の男は俺の下に歩いてくると、錠剤の入った瓶を投げる。

「満月の日に飲ませろ」

「何?」

説明不足のまま、窓を割って飛び出ていった。

一体、ここに何をしに来たのか?

行動から見れば、俺を助けたのではなく、佳那美を止めにきたように見える。

「全く、無駄に窓ガラスを割りやがって」

ところどころが痛すぎる。

佳那美は先ほどの過激さはなくなっているようだ。

「本当、酷い事するね」

一番の元凶は佳那美だ。

腕を元に戻したが折れたままで、ゆっくりと俺に近づいてくる。

「お前、記憶は、あるのか?」

「あるよ」

「全く、痛えことすんじゃねえか」

「あは、自分でも止められないんだ」

佳那美は、軽口を叩くが額から汗が流れている。

腕の骨が折れている以上は、痛みに耐えるのにも必死だろう。

「あいつが何かしたのか?」

「口の中に何か入れてきて、それを飲んだら治ったよ。不思議だね」

「あの野郎、もっとちゃんと説明しろよ」

「まあ、いいじゃない。鷹威君も殺されなかったんだしさ」

「何だそりゃ、自分がやったっていう自覚ねえのかよ?」

「犬にかまれたと思ってさ、今日のところは水に流してよ」

佳那美の野郎、全部満月のせいにするつもりかよ。

都合が良すぎるだろ。

「く、そ」

痛みが増してくる。

「手ひどくやられたな」

佳那美以外の声が傍から聞こえてくる。

上から覗くのは楓だった。

「楓ー、早く手当てしてあげたほうがいいよー」

聞きなれないもう一つの声もする。
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