第七世界
「鬼の村の娘の怪我は、唾でもつけてれば治る」

「酷いなあ。これ、本当に痛くて早く治して欲しいんだよ」

出会った当初からは考えられないような、図太さである。

しかし、鬼の村やら、寿命を使うような治癒能力やら、ワケがわかんねえ。

無駄に人数が増えられても、頭がこんがらがるだけだぞ。

「ティーナさん、ありがとう、助かったよ」

ティーナさんは白を基準とした服装で身を包んでいる。

「気にしなくてもいいよー」

「でも、何で学校なんかにいるんだ?」

「楓のお買い物を手伝うために、迎えに来たんだー」

自分の買い物なのに、人に来させるとは楓らしい。

「人に嫌がらせをする道具でも買うつもりか?」

「ふふ、どうだろうねー」

美人が揃っているが、ティーナさん以外は性格悪いよな。

「ほう、君は私の手伝いをしたいんだな」

「は?」

「明日、私の用事に付き合ってもらう」

「明日は平日じゃないか、俺の授業はどうなるんだよ?」

「大丈夫だ。君は授業を休んでも単位を取れると私は自負している」

「何の保証もねえだろ!ちょっとは隣のティーナさんを見習えよ!」

「ああ、君は取れる単位を失いたいようだな」

「何でそうなるんだよ!自由になる権利を寄越せ!」

暴君ここに極めたりだな。

しかし、楓の授業もあったはずだが、仕事を放棄するほど重要な事なのか。

「その用事って、何だよ?」

「秘密だ。一つ言える事は、君は天国と感じるかもしれない」

「秘密って話ほど、ろくなもんはねえ」

楓がどう言おうとも、俺にとっては地獄エクスプレスに乗せられているに違いない。
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