第七世界
「はあ、憂鬱だぜ」

怪我のほぼ治った俺は家路についている。

ティーナさんは医者だということで、お買い物を中断して佳那美を自分の病院に連れて行った。

自分の用事を邪魔された楓は面倒くさそうだったな。

しかし、医者だというのに、寿命を使う技を使用するってどないやねんと言いたくなる。

だって、寿命だぞ?

自分の死ぬまでの期間を短くしてまで、俺の怪我を治したんだ。

はっきりいって馬鹿だぜ。

医学に頼れば、何の問題もなかったのによ。

「やっぱ、俺は無駄な事をしたのかねえ」

自分やティーナさんに腹立たしくなってきた。

自分が何も出来ずに、仮面の男にいいとこ取りをされたところと、ティーナさんが自分の命を粗末にしすぎているところとか。

佳那美の衝動を止める薬を持ってるんなら最初から渡しとけよ、ボケ。

とりあえず、あの男は一体何なんだよ。


「くそ、苛立つぜえ」

コンクリートで出来た塀を殴りつける。

「いてええ!」

せっかく治したのに、無駄な怪我を負ってしまったぞ。

手を振りながら、自分の家に到着した。

家から外へと明かりが漏れている。

泥棒ではなく、小さな巨人がふんぞり返っているのだろう。

今日は余計な物を作ってなければいいがな。

「はあ」

扉を開けると、いきなり飛び蹴りが顔面にヒット。

「ぐあ!」

「遅いねん!」

せっかく、寿命まで使ってくれた治療が台無しだ。

鼻血を出しながら小さな巨人を見ると、エプロンを装着済みだ。

「とんだお出迎えじゃねえか。もうちょっと労われよ」

「ふん、労わって欲しかったらもっと早く帰ってきたらええねん」

「俺には俺の用事があるんだよ」

「そんなん知らん!早くご飯作るで!」

そういえば、飯を一緒に作ると言ってしまった記憶がある。
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