第七世界
長袖に足の太さを隠すためのスカートという女性用の服はきっちり着込んだ。

ついでに用意してあったカツラまで被って、ほとんど女性に近い格好になったわけだ。

後は、ティーナさんが化粧を施して、全て完了した。

化粧の印象が薄い楓に手入れをされなくて良かったと思うべきなのか。

「いや、全然良くねえ」

女性用トイレの鏡の前に立っているが、違和感はない。

女性用という事で羞恥心に襲われているわけだが、他の女性は気付かない。

元々中性的な顔立ちだったので、化粧をすればオカマの綺麗な方に入る。

「これ、絶対何かの罰ゲームだろ」

「こら、声を出すんじゃない。君が男だとバレたらどうするんだ」

「解ったから、トイレから出ようぜ」

「時間もないしねえ」

拒んでも無駄だと解っているので、変な抵抗せずに進み続ける。

俺達はトイレから出ると、店に向った。


店の外観は小奇麗で大きく、入り口の上に設置された看板には『Frieden(平和)』と書かれている。

一体、何を作っている店なんだろうか。

「なあ」

「駄目だ、声が男だ。もっと美声にするんだ」

「無茶を言うなよ」

「やってから無茶と言うんだ」

俺は美声を出すために調整する。

「こ、これでどう?」

「クソ溜めだな」

「おいおいおい!努力を認めろよ!」

「仕方がないな。君のために用意した物がある」

ポケットを探って取り出したのが、チョークだった。

「これを食べれば素敵にチェンジ。さ、今すぐ食せ」

「いやいやいや!生徒になんて物を勧めてるんだ!」

「楓ー、炭酸カルシウムは食べられるけど、身体に悪いんだよー」

ティーナさんの優しさのおかげで、チョークルートを回避できると思いきや。

「ティーナ、男にはやらなくてはならない時がある。それが今だ」

楓は俺の口の中へとチョークを無理矢理ぶち込んだ。
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