Tactic
「智也!!そんないい方ないでしょ?南木先輩は本当にあんたを心配して…」


「良かったじゃん。兄貴とお近づきになれて。……俺なんかいなくてもいいんじゃねぇの?」


「また……叶さんって人のとこに行ってたの?何かトラブルでもあったんじゃ」


俺はしばらく無言のままでいた。

心配するトーコの顔を見つめた後、そのまま勢いよくトーコの手首を掴む。


「……今までこの指、女ん中突っ込んでた。どう?これで満足?俺がどこに行ってたか知りたかったんだろ?」


トーコは、俺の手を振り払った。


今まで温もりを感じていた手が、一瞬にして冷たい空気に晒された。


下唇を噛み締め、瞼を強く閉じる。


そして、ゆっくりと目を開けると己の手を見つめた。



「汚ぇだろ、俺の手。……さっさとそこどいて、風呂に入らせてよ」


二人の間を割って入り、玄関のドアに向かった。
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