Tactic
「ト…トーコ?……兄貴」


私と先輩は勢いよく振り返る。

目の前にいたのは、キャップを目深に被った智也だった。


「智也!!今までどこ行ってたんだよっ?」


先輩は怒鳴りながら智也に駆け寄る。慌てて私は、後から先輩についていく。


「……んで……二人一緒なんだよ。こんな朝っぱらから。しかもジャージって」


「バカ!!こうでもしなきゃこんな朝早く家出れねぇだろ?!若宮はな、帰るとき何か思いつめた顔をしていたお前のことが心配で、何度も電話くれたんだぞ?夜はさすがに危ねぇから探しには行けなかったけど、朝に探しに行こうって若宮、親にジョギングするからって嘘までついて来てくれてさ……まじでどこ行ってたんだよ?」


二人の言い争いが始まり、私はおろおろしながらその様を見ることしかできなかった。



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