Tactic
その音に慌てて顔をあげる。

玄関から出てきたのは、智也だった。

急いで羽織ったのか、学ランのボタンは全てはだけ、中のシャツが露になっている。

寝ぐせがついた髪の毛が、ほんの少し可愛らしく感じた。


「智也……」


怒ったような表情で私に勢いよく近づくと罵声を浴びせる。


「お前な!!んな所にずっと居られたら迷惑なんだよっ」


文句を言いながらも、急いで来てくれたことに嬉しく感じて、「ごめんね」と、呟く私。


あのとき振り払った手が、また戻ってきたと思うと涙が出そうになった。
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