Tactic
「なんで……助けたんだよ?俺なんか、兄貴に生意気なことしか言わねぇのに……なんで助けたりしたの?いっぽ間違えれば、ひどい目にあったりーー死んでたかもしんねぇんだぜ?」


「弟だから。家族なんだから、助けるのは当たり前だろ?オレは、お前のためなら命だって、なんだって賭けられるぜ?」

満面の笑みで兄貴は言い放った。

少しも恥じらいを見せず、自分の気持ちを真っ直ぐに俺へとぶつけてきた。


……かなわないと思った。


兄貴を追い越すことなんて、一生できないんだって。


広くて大きな心をもった兄貴には絶対にかなわないって。


あんなに憎まれ口を叩いてきた俺に、あんなクサイ科白を吐けるなんて、俺にはできやしない。


本当に、俺のこと心配してくれたんだなって……あのときかばってくれて、ようやく気づいた。


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