Tactic
ドクンドクンと、心臓がせわしなく動く。


扉をゆっくりと締め、トーコは黙ったままベッドの方へと歩み寄る。


そして、ベッド横にあった小さな丸イスに腰をかけた。


「智也、起きてて……大丈夫なの?」


言葉が出てこない。


今、ようやく巻き戻しを完了したかの如く、頭の中の整理がついた。


トーコはあのとき、俺を病院へと運んだ。

俺も、混乱していて意識もなくなりそうな極限状態の中、トーコの心音が聴けたことに、バカみたいに嬉しく思っていたけれど……

今、冷静に考えてみれば、それって、兄貴と一緒に俺を助けにきてくれたってことだ。


一部始終、見られてたってことか?


いつから?


いつから、どの辺りからみっともない俺の姿を見ていたんだ?



< 190 / 305 >

この作品をシェア

pagetop