Tactic
下唇を噛み締めた。


微かに震える唇を、抑えるように。


「いつ……から?」


俺のかすれた小さな声に、トーコは聞き返す。


「いつからいたんだよ?あの場所に」


俺の小さく呟いた言葉に、トーコは戸惑いながらも答えた。


「……南木先輩が……助ける前から。私だけ、先に後をつけて……」


トーコの言葉を聞いて、一瞬息を止めた。


手の震えが止まらない。
なんだか、不思議なことに笑いも止まらない。


「はっ……なんだ。全部見られちまったのか。情けねぇよな、俺。自業自得って……やつだよな」

言葉も止まらない。


「お前が兄貴を好きな気持ち……分かるよ。頼りになるし、体張って助けてくれるし……」


自分の不甲斐なさに悔しくて、涙が一筋こぼれた。


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