Tactic
「別に……朝一緒に登校するくらい、兄貴が高校生になってからでもできるだろっ?」


「途中までしか一緒に登校できねぇじゃん。同じ門くぐんなきゃ、意味ねぇよ。でもさ、お前どうせオレと違う高校選ぶだろっ?なぁ、オレと一緒に西高行こうぜ。そしたらまた一緒に通えるだろ?」


俺の顔を覗き、兄貴が言った。


「そんなに、俺と一緒にいたいわけ?」

呆れた表情で俺は兄貴に言う。


「だってさ、やっと……お前がオレと話してくれるようになったんだし。この何年かの間、オレらホントに家族なの?ってくらい冷めきってたし。……なんか、嬉しいんだよ。あの事件があったのは、必然的だったんだって」

兄貴の本音が、痛いほど伝わった。


俺がガキだったから。

だから、みんなに迷惑かけた。傷つけた。

もう、誰も傷つけたくないって思った。



「あと二年後のことじゃん。今、話してどうすんだよ。俺は、西高には行かないよ。兄貴に……縋ってばっかもヤだから。頼りっぱなしもヤだからね」


自分の思いを、素直に言わなければならないことも知った。



「そっか。まぁ、ゆっくり考えればいいよ。急ぎすぎもよくないしな」


兄貴は俺に笑みを向け、バンっと背中を思いきり叩いた。




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