Tactic
兄貴の卒業式当日。


我が家は朝からバタバタとしていた。


「智也!お母さん、允也の卒業式に行ってくるから。お昼までに帰るからね」


俺の部屋にむかって、叫ぶ母親。


「うるせー。大きな声出さなくても聞こえてるっつーの」


ベッドの中で、未だ寝ぼけ眼の俺は、もぞもぞしながら、布団を頭から被り直した。


扉がしまる音が聞こえ、急に家の中が静まり返った。


ようやく静かになったと思いながら、ゆっくりと布団から顔を出す。


「だる……」


重い体を起こし、頭を何度か掻き、あくびをする。



と、二階の俺の部屋へ来るのか、階段をのぼる足音が聞こえてきた。
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