Tactic
あたしは思わず顔を背けた。


「なに?何か用?」


それと同時にそっけない冷たい言葉。


智也は、南木先輩とは違ってやけに色気のある大人びた雰囲気の少年だ。


智也のことを好きでも何でもないあたしが、こんなにも頬を赤く染めるのだから、きっと他の女の子はもっと……赤く染めているに違いない。


「お前さ、帰る気だろ?」


「え?もう部活も終わったんだから帰るの当たり前でしょ……」


瞬間、智也の手が私の腕を掴んで階段の手摺付近へと強引に押しつけられる。


「な…なに?」


「なんか忘れてんじゃねぇ?」



鋭い眼差しで見つめられ、私は智也の瞳から目をそらせられないでいた。
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