Tactic
「どした?若宮」


不思議そうな顔で、先輩は小首を傾げていた。


「あのっ……私……」


今度こそ、好きって伝えたかった。


なのに、いつも脳裏に現れるのは智也の姿だ。


何度、阻まれただろう。

彼の残像に。


その度に、胸が苦しくて、先輩に想いを告げられない。


今日もまた、そうだった。

いや、いつも以上だ。


「若宮?」


「あ、あの……私も西高目指しているので、そのときは、よろしくお願いします!」


「そうだな。俺も若宮が来てくれたら嬉しいよ」


私は結局、先輩に伝えなかった。


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