Tactic
「なんで、こんなとこにいんだよ?」


先に、口を開いたのは智也だった。


力強くて色っぽさを合わせたような視線が、私を捉え離さない。


「あの……花を落としちゃって。ほら、その胸につける花」


そう言って、智也の胸につけてある赤いバラの花を指さした。


「あぁ、これ?」


視線が、ようやく私から外れた。


少し、安心してしまう。

「智也は?もう、みんな体育館行っちゃったよ?」


「俺?俺は金髪のままだったから……職員室で無理やり黒のスプレー振りかけられてさ。今から体育館行くとこ」



「そうなんだ」と、言葉を濁した。


二年ぶりの会話。あのときとは、どこか違う心身共に成長した智也の姿。


これ以上、会話していたら、ドキドキしすぎて私の心臓おかしくなっちゃう。



「早く行ったほうがいいよ。式始まっちゃうよ?私はもう少し探してから行くから」


そう言って、智也を通り過ぎようとした。


瞬間、いきなり腕を掴まれ後ろへと引き寄せられた。


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