Tactic
「あ~あ、泣かしちゃった」


その声に、俺は振り返る。


「あん……」


相馬安司(そうまあんじ)

中2からの付き合いで、いつも一緒にいる俺のダチ。


少し、外国の血が入っているようで、うっすらとアッシュな瞳は吸い込まれるほどに綺麗だ。


「つぐみちゃん、いらないなら俺にちょうだいよ」

「いらないとかそういう問題じゃねぇだろ?」


安司は俺の肩に腕を回し、体重を乗せる。


「ほんと、お前は彼女作らねーよな?中2の頃からずっと……」


「あん」


「もしかして……忘れられない女がいるとか?」

「あんじ!」


荒げた声に、安司の腕がするりと解けた。


「それ以上言ったら、知らねぇぞ」


鋭い目で、安司を睨んで、ちょうどホームに入ってきた電車に乗り込んだ。
< 222 / 305 >

この作品をシェア

pagetop