Tactic
二人の笑い声が、その場に響いていた。


だけど、それを遮ったのは俺の言葉だった。



「あのとき、兄貴に告白……しなかったのか?」

俺は、ずっと心の中でくすぶっていたことをトーコに聞いてみた。


トーコは驚きはしたものの、すぐさま表情を緩め、口を開く。


「あ、うん。しなかった。気づいてたんでしょ?」

「まぁ……な。兄貴、ずっと部活だったし、女いる気配ねぇし。お前も……」


慌てて口をつぐんだ。

……って、トーコを陰ながら見ていたことがバレるじゃん。


「ま……まぁ、二年、いや三年前のことだけどよ、今更聞くのもなんつーかアホらしいけど……気になってさ。でもお前とは口きいてなかったし」


「うん。なんで口きいてなかったんだろうね、私達」


「俺が、押し倒したから……だろ?」


軽く笑みを浮かべていたトーコは、俺の真面目な面もちに表情を固まらせた。
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