Tactic
下唇を噛み締めた俺。


鼓動が、せわしなく動く。


覚悟して口を開いた。


「あのさっ……」


「ごめんね?」


だけど、俺の小さな声は、トーコの声にかき消された。


「え?あ、あ~……なにが?」


そう言って、慌てながらも平常心を保つ。

と、いうより、少しホッとした。


だけど、その平常心もすぐに打ち消されるとは。

「井上くん。萌のこと紹介するためだったのに……相馬くんに悪いことしちゃったかな」


「別に。いいんじゃね?アイツはそんなこと気にしねぇし」


「それなら良かった。いつも、学校でよくしてもらってるから、断れなくて……」


ホッと胸をなで下ろしたトーコの言葉に、俺はピクリと反応した。
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