Tactic
「どうしたの?智也。なんで急に帰るの?」


「うるせぇな!ついてくんなよ!」


「でも……」



兄貴よりも鈍感だな。

ほんと、腹立つくらい。

俺は歩みを止め、背後から追いかけてくるトーコに体を向けた。


「なに?どう言えば帰らせてくれるの?女に呼び出されたって言えばいいのか?」


「そんな……そんなこと言ってないじゃない!智也の考えていること、分かんない。久しぶりに楽しく話せたと思ったら、こんな風に機嫌悪くなって……智也の気持ち、全然伝わんないっ……」


「こーいうことだよ!」

何もかも、腹立たしかった。

トーコの声も、顔も、発せられる言葉さえも。


こんなに好きなのに、伝わらないなんて。


そう思った瞬間、気づけば俺は、トーコの手を引っ張り唇を重ねていた。




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