Tactic
トーコをあの場所に残したまま、俺はつぐみに電話した。


ホームに電車が入ってくる。


「つぐみ、俺のこと……今すぐ欲しいか?」


電車のブレーキ音がうるさくて、会話にならなかった。


だけど、つぐみの返事が、微かに聞こえた。


「欲しけりゃくれてやるよ、こんな体」


自分でも思う。

なにやってんだろうって。


たった、数時間前までは愛しい人の唇を覆っていたというのに。
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