Tactic
「智也っ、待てって」

兄貴は屈託のない笑顔で俺に追いついた。


そして、何も言わず俺の隣りに並び歩き始める兄貴。


沈黙が続いたまま、暫く歩いていると兄貴が口を開いた。


「なぁ、智也。お前……さ、学校楽しい?」

「なんだよ?急に。親みたい」


兄貴は戸惑いがちに聞いてきた。


俺の顔は見ない。


ただ、前を見据えている。


横を振り向けば、兄貴の鼻先が視線にぶつかる。

二つ年上の兄貴とさほど変わらない身長。


いや、まだ兄貴を越せない。


越せやしない。


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