Tactic
「毎日楽しいよ、叶さんとつるんでいるときは。色んな遊び教えてくれる。女も与えてくれる。まぁ、童貞の兄貴じゃ想像つかないだろうけど」


目の前にコンビニが見えた。


その扉の前には叶さんがバイクに跨り俺を待っていた。


俺は歩みを止めて、一度兄貴を見据える。



「兄貴といるより、叶さんといる方が楽しい」


「智也……」


兄貴は俺の目を真っ直ぐ見つめ、か細く名を呟いた。


いつもとは違う、沈んだ表情で。


そんな兄貴の視線を反らすかのように、俺はコンビニまで駆け出し叶さんのバイクに乗った。


「叶さん、遅れてすみません!出して下さい」


「はいよ」


バイクは爆音を奏で、叶さんの金髪が風になびいていた。


俺は叶さんの腰を掴んだまま目を瞑る。


後方で佇む兄貴の姿を、一度も見ないまま風が全身を貫いた。

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