Tactic

「よかったのか？」


バイクは地元を一周してから叶さんの彼女のリエさんちの前で止まった。


俺はゆっくりとバイクからおりる。


「あぁ、今からりえさんと会うんでしょ？俺は大丈夫です。ここから歩いて帰りますし……」


「そうじゃなくて、兄貴……だろ？さっきの」


その言葉に、俺は固まった。


「お前と似てないなぁ。なんつーか、真面目な感じ」


「ははっ。叶さんの嫌いなタイプですよ、きっと。兄貴はいつも俺の上にいる。優しくて、友達思いで、困ってる人がいると迷わず助けに行くそんな兄貴には絶対……何をしても勝てない」


叶さんはポケットから煙草を取り出すと、口に挟む。


「お前、兄貴のこと好きなんだな」


「え？」


「だってそうだろ？今の聞いてたら、いいことしか言わねぇ。なら、兄貴の嫌いな所言ってみろよ」


叶さんの言葉に、俺は何も答えられずにいた。