Tactic
しばらく歩いていると、コンビニの前には数人の男女がたむろっていた。

バイクを無造作に停め、その場に座りながら大声で話す、私の最も苦手な人達。


こういう風に手を繋いでいる男女が通りかかると、面識もないのに野次を飛ばす。


智也との手、離したほうがいいのかな?


だけど、自分から離すのもなんだか嫌なの。


もう少し……智也の体温を感じていたい。


そう思った瞬間、私の手が冷たい空気に触れた。

今まで温かかった掌が、冬の冷たさに晒されたのだ。


智也もああいう人達に冷やかされるのが嫌なの?

だけど、違った。


「叶さん」


見上げた智也の横顔が、別人に見える。


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