Tactic
智也は冷やかされるのが嫌で私の手を離したんじゃない。

知り合いがいたから、離した。

私の最も苦手な人達の中にいる智也は、私の知らない智也だった。


「智也くん、こっちおいでよ~」


智也が叶さんと呼んだ人の背後から、綺麗な女の人が顔を出した。

その細い指先は、智也の腕に絡まる。


それにより、智也の足が一歩前へと歩み寄った。

瞬間、無意識のうちに智也の制服の裾を握っていた。

行かないでよ、なんて口に出せない。

ただ、このまま智也が目の前の女の人の所に行っちゃうんだって思ったら、急に……


胸が苦しくなった。


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