私の好きな人
会場のホテルに着き、中に入る途中に内定式の時に案内をしてくれた男の人がいた。
何回か会っているのに、名前も知らない…
思い切って聞いてみることにした。
「あの…お疲れ様です。」
声をかけると、何も言わずにこちらを怪訝そうに見た。
「あ…お忙しいですよね。すみません…。」
といい、立ち去ろうとすると腕を捕まれた。
しばらく間があり、「はい、わかりました。」というと、こちらに向き直して
「佐藤さんか。久しぶりだね。」
先程の嫌な表情は消え、笑顔になった。
あれ?と思っていると、
「ごめんね、指示が飛んできててさ。」
と、言いながら耳のイヤホンを指差した。
内定式の時の、厳しい物言いとは違い、優しい感じに少し、困惑したが逆に優しそうで良かったと思った。