哀鎌
S
「ふわぁ~…暇だ」
大きな欠伸を一つして、ぼそりと今の心境を呟いた少年『市井武人(イチイタケト)』はどこにでもいる17歳男子だ。
今の心境を呟いた彼ではあるが、実際のところあまり暇ではない。
むしろそんな余裕など、これっぽっちも無いはずである。
武人は目の前に積み上げられた山のような課題を見上げて途方に暮れていたところだ。
つまり、現実逃避。
「…よし。俺はこれから旅に出なくてはいけない」
とか言いながら席を立ち上がった武人を、隣に座っていた彼の友人『橋田誠一(ハシダセイイチ)』が見咎める。
武人と同じように誠一の机にも山のような課題が積み上げられていた。
「はぁ?お前、頭大丈夫?」
「あー…うん、多分大丈夫」
誠一の言葉を軽く受け流しながら教室から出て行こうとする武人を、後ろから誰かの手が引き止めた。頭をがっちりと鷲掴んで。
「くぉら市井~。お前、どこ行こうとしてんだ?」
引き止めたのは若い女教師だった。
女教師といっても、明らかに元ヤンだと分かる容姿だが。
顔に貼り付けた笑顔が逆に怖い。
「コンニチワ先生。僕はこれから旅に出なくてはいけないのデス」
「そーかいそーかい。なら、この課題を終わらせてから行きな」
「そういう訳にはいかないのデス。今すぐ行かなくてはいけないのデス」
ひょうひょうと武人が答えると、女教師のこめかみにぴきっと青筋がはしった。
大きな欠伸を一つして、ぼそりと今の心境を呟いた少年『市井武人(イチイタケト)』はどこにでもいる17歳男子だ。
今の心境を呟いた彼ではあるが、実際のところあまり暇ではない。
むしろそんな余裕など、これっぽっちも無いはずである。
武人は目の前に積み上げられた山のような課題を見上げて途方に暮れていたところだ。
つまり、現実逃避。
「…よし。俺はこれから旅に出なくてはいけない」
とか言いながら席を立ち上がった武人を、隣に座っていた彼の友人『橋田誠一(ハシダセイイチ)』が見咎める。
武人と同じように誠一の机にも山のような課題が積み上げられていた。
「はぁ?お前、頭大丈夫?」
「あー…うん、多分大丈夫」
誠一の言葉を軽く受け流しながら教室から出て行こうとする武人を、後ろから誰かの手が引き止めた。頭をがっちりと鷲掴んで。
「くぉら市井~。お前、どこ行こうとしてんだ?」
引き止めたのは若い女教師だった。
女教師といっても、明らかに元ヤンだと分かる容姿だが。
顔に貼り付けた笑顔が逆に怖い。
「コンニチワ先生。僕はこれから旅に出なくてはいけないのデス」
「そーかいそーかい。なら、この課題を終わらせてから行きな」
「そういう訳にはいかないのデス。今すぐ行かなくてはいけないのデス」
ひょうひょうと武人が答えると、女教師のこめかみにぴきっと青筋がはしった。