恋愛アドバイサーズ
「こんな所でどうしたの?」
見ると、そこには昔の面影を残した美人が両手にスーパーの袋を引っさげて立っている。
「美鈴先輩!」
先輩と話すのは先輩が大学を卒業して以来だった。
メールはするが会って話すのは1年ぶり。
先輩は、幼稚園の先生になったらしい。それは昔からの夢だったことなんだとか。
先輩のもたらす影響力というのは絶大で、その幼稚園の送り迎えは、美鈴先輩見たさで来るお父さんの仕事となり、お母さんの負担を減らしているとかなんとか。
主人の仕事の都合で変わりに来る妻に「本当、美鈴先生が来てくれて助かったわ」とよく言われるんだとか。
今じゃ、美鈴先輩は幼稚園のアイドル先生であり、夫婦の守り神的存在になっているらしい。
「久しぶりねぇ〜。中にはいらないの?」
入り口を指差してニコリ。
その笑顔は年月を経るごとに、強力な引力を発しているように思えた。
「えぇ……入ります」
ゴクリ……
二人の生唾を飲む音が重なる。
階段を一段一段上るごとに背後にいる美鈴先輩の視線が痛く感じる。
コンクリートの打ちっぱなしの壁に涼しさを覚え、一段一段確実に上る。