嘘と嘘で始まる
あと少しでわたしの住むマンションに着くという時、ぎゅっと握られていた手が緩められて、解放された。

今までつながってたのに急に放りだされた気がして、なんだか寂しい。
やっぱり好きだし…。
「なんもつけてないな」

「は?」

慎也を見ると、今までに見せてくれた事のない表情をしていた。
まるで、欲しいものを手に入れて誰かに自慢したくてたまらない子供のよう。

「指。なんにもつけてないな」

指?指ですか?

両手を広げて慎也の目の前に見せる。

慎也はにんまりと口角を上げて、大きく頷く。

「よっしゃ」

「よっしゃ?なんなの一体。今日の慎也変だよ」
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