嘘と嘘で始まる
「今までの俺が変だったの」

「え?どういう…」

「言っとくけど、お前も変だったんだからな」

「…何言ってるの?」

慎也は、再び私の左手を握ると、今までに見せてくれた事のない表情で私を見ている。欲しいものを手に入れて、『どうだー』って言ってる子供みたいな。
こんな時だけど、そんな慎也にドキドキしてしまって、何も考えられなくなってしまう。
まるで私の事を大切に思ってくれてるように見つめられると、慎也の彼女の存在を一瞬忘れてしまいそうになる。
思わず涙が落ちてきそうになるのをこらえて俯くと、

「そろそろ着くぞ」

タクシーは、私のマンションの前に止まった。
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