嘘と嘘で始まる
資料室で、わが社が手掛けた過去の北海道のホテルの一覧作りに悪戦苦闘している午後9時。

そろそろ集中力も限界で、慎也はジャケットを脱ぎ、ネクタイも緩めた格好で机に足を投げ出していた。

「腹すいた~。続きは連休明けにして飯食いに行こうぜ」

「う~ん。ほとんどそろったし、残りは休み明けでもいいか」

大きく体を伸ばしながら言う私を見ていた慎也は、不意に目を細めると、

「お前、また痩せたんじゃねえの?」

「え?そうかなあ」

「最近残業続きで体きついのはわかるけど、ちゃんと食べないと彼氏に捨てられるぞ」

「そ、そんな事ないよ。別に痩せてたって大丈夫だもん」

慌てて言い返す私の体をじ~っと見てる慎也。

「なにじっと見てんのよ」

「いや…やっぱ痩せたな。胸」

にかって笑う慎也にグーでお腹に一発。

「い、いてーだろ」

「そっちがやらしい事言うからでしょ」

私の顔、きっと赤くなってるはず。少し俯きながら机を片付け始める。
< 3 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop