Fate
「シェスカ様、シェスカ様！　大丈夫ですか、開けますよ！」

　閉じられた扉の向こうから聞こえる、自身の世話係である女性の叫び声に気が付いて、シェスカ＝ホーキンスは目を覚ました。

　まず視界に入ったのは、何の柄も無い真っ白い天井。いつも見慣れた、風景。

　上半身を起こして左側を見ると、緑のカーテンで閉じられた窓。これも、いつも見慣れた風景。

　カーテンを開くと、朝の日の光が差し込んできた。少し、目に沁みる。

　ドアの向こうからは相変わらず世話係の女性の声が聞こえていて、激しくドアをノックしている。

　嫌な夢を見ていた。真っ暗闇の中で誰かに追われる、とても嫌な夢。

　思い出すだけで泣きたくなるような夢の内容を、深い溜め息とともに頭の中から吐き出した。

　そして、今にもドアを蹴破って入ってきそうな勢いの女性に「起きているわ、どうぞ」と答える。

　ノックが止み、「失礼します」という声とともに、世話係の女性が入ってきた。

　その女性は背が高く、すっと通った鼻に眼鏡を掛けている。よく手入れしていることが窺える金色のウェーブの掛かった髪は、腰に届こうかというところまで伸びている。

「おはようございます、シェスカ様」

　女性は、僅かに頭を下げて微笑んだ。
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