Fate
「この曲がり具合は、どうなの? プロの仕事として、許容範囲を超えている気がするわ。“神腕の貴公子”が聞いて呆れるわね」
溜め息混じりに、女性が言った。
青年は、肩をすくめて苦笑いする。それから、右手を挙げてヒラヒラ、と振って見せた。
「おいおい、あんまりいじめないでくれ、我が秘書官殿。あの頃は俺たちも若かった。それに、俺が“神腕の貴公子”だとか呼ばれ始めるのはもう少し先の話だ。言い分けついでにもう一つ言わせてもらうと、俺はあくまで“機工士”だからルド専門であって、穴を掘るのは専門外だ」
女性はまだ何か言いたそうな顔をしていたが、ただ首を横に振ってそれを飲み込んだ。
代わりに、肩から掛けた大きな鞄から束になった、二つ折りの書類を取り出した。
「今回の件、もう一度確認しときましょうか?」
「ああ、頼む」
女性が紙を捲りながら投げ掛けた問いに、青年は振り向くこともなく答えた。
話しながらも、足取りは軽やか。通路を着実に進んでいく。
「依頼は、ここで発掘を続ける作業員から。なんでも、近頃いつも決まった時間に幽霊が出るとか……作業員たちが怖がって仕事にならないらしいわ」
溜め息混じりに、女性が言った。
青年は、肩をすくめて苦笑いする。それから、右手を挙げてヒラヒラ、と振って見せた。
「おいおい、あんまりいじめないでくれ、我が秘書官殿。あの頃は俺たちも若かった。それに、俺が“神腕の貴公子”だとか呼ばれ始めるのはもう少し先の話だ。言い分けついでにもう一つ言わせてもらうと、俺はあくまで“機工士”だからルド専門であって、穴を掘るのは専門外だ」
女性はまだ何か言いたそうな顔をしていたが、ただ首を横に振ってそれを飲み込んだ。
代わりに、肩から掛けた大きな鞄から束になった、二つ折りの書類を取り出した。
「今回の件、もう一度確認しときましょうか?」
「ああ、頼む」
女性が紙を捲りながら投げ掛けた問いに、青年は振り向くこともなく答えた。
話しながらも、足取りは軽やか。通路を着実に進んでいく。
「依頼は、ここで発掘を続ける作業員から。なんでも、近頃いつも決まった時間に幽霊が出るとか……作業員たちが怖がって仕事にならないらしいわ」